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富山地方裁判所 平成9年(行ウ)5号 判決

原告

若林和二

右訴訟代理人弁護士

青島明生

被告

富山県代表監査委員

川原喜正

右訴訟代理人弁護士

島崎良夫

右指定代理人

村田隆夫

外四名

主文

一  被告が原告に対し、平成八年三月二一日付けでした富山県監査委員事務局の平成六年度の出勤簿の非開示決定のうち、別紙一及び二記載の部分以外の部分を非開示とした部分を取り消す。

二  原告のその余の請求を棄却する。

三  訴訟費用は被告の負担とする。

事実及び理由

第一  原告の請求

一  被告が原告に対し、平成八年三月二一日付けでした富山県監査委員事務局の平成六年度の出勤簿の非開示決定を取り消す。

二  訴訟費用は被告の負担とする。

第二  事案の概要

一  本件は、原告が被告に対して、県職員のいわゆる空出張の有無等を調査する目的で富山県情報公開条例(以下「本件条例」という。)に基づき、富山県監査委員事務局の平成六年度の出勤簿(以下「本件出勤簿」という。)の開示を請求したところ、被告がその全部について非開示とする旨の決定(以下「本件決定」という。)をしたため、原告が同決定の取消しを求めた事案である。

二  当事者間に争いのない事実及び証拠から明らかな事実によれば以下の事実が認められる。

1  原告は被告に対し、平成八年一月二五日、本件条例六条一項に基づいて公文書である本件出勤簿の開示を請求した。

2  これに対して被告は、平成八年二月八日付けで本件条例八条三項により決定期間を同年三月二一日まで延長した上、同日付けで本件決定をした。

3  原告は被告に対し、平成八年三月二八日、異議申立てをしたが、被告は、平成九年四月一五日付けで右異議申立てを棄却し、同決定は、同月一六日、原告に到達した。

4  本件条例には次のとおりの規定がある。

一条 この条例は、公文書の開示を請求する県民の権利を明らかにするとともに、情報公開の総合的な推進に関し必要な事項を定めることにより、県民の県政に対する理解と信頼を深め、県民参加の開かれた県政を一層推進することを目的とする。

二条 この条例において「公文書」とは、実施機関の職員が職務上作成し、又は取得した文書、図面、写真及びマイクロフィルムであって、決裁その他これに準ずる手続が終了し、実施機関において管理しているものをいう。

二項以下 (略)

四条 実施機関は、公文書の開示を請求する県民の権利が十分に尊重されるようこの条例を解釈し、及び運用するものとする。この場合において、実施機関は、個人に関する情報がみだりに公にされることがないよう最大限の配慮をしなければならない。

六条 県内に住所を有する個人並びに県内に事務所又は事業所を有する個人及び法人その他の団体は、実施機関に対し、公文書の開示を請求することができる。

二項 (略)

一〇条 実施機関は、公文書の開示の請求に係る公文書に次の各号のいずれかに該当する情報が記録されている場合においては、公文書の開示をしないことができる。

一号 (略)

二号 個人に関する情報(事業を営む個人の当該事業に関する情報を除く。)で特定の個人が識別され得るもの。ただし、次に掲げる情報を除く。

ア (略)

イ (略)

ウ 法令等の規定に基づく許可、認可、免許、届出等に際して実施機関が作成し、又は取得した情報であって、開示をすることが公益上必要であると認められるもの

三号以下 (略)

二条 実施機関は、公文書の開示の請求に係る公文書に前条各号のいずれかに該当する情報が記録されている部分がある場合において、その部分を容易に、かつ、公文書の開示の請求の趣旨を損なわない程度に分離することができるときは、その部分を除いて、公文書の開示をしなければならない。

5  富山県職員の出勤簿は、職員一人につき暦年ごとに一枚の書式となっており、表面に一月から六月までの、裏面に七月から一二月までの欄があり、表面の上部に「職」、「氏名」、裏面の上部に「採用年月日」、「退職年月日」、「前年からの繰越日数」、「翌年への繰越日数」の各欄があり、各日付の欄には出勤の状況、出張の状況、年次休暇や特別休暇の取得状況及び職務専念義務免除等の職員の勤務状況並びに長期療養等に基づく休職、懲戒処分としての停職等について次のとおりの略記号印又は手書きにより記載されている。

すなわち、出勤の場合には職員自ら捺印し、出張については、県外出張の場合には出張、県内出張の場合には「出張」との記載がなされ、休暇については、年次休暇の場合には「休暇」、「半休」、「休暇〇時間」との記載が、病気休暇の場合には「病休」、「病気休暇」との記載が、特別休暇の場合には「特休」、「忌引」との記載が、介護休暇の場合には「介護休暇」との記載がなされ、さらに、育児休業の場合には「育児休業」、職務専念義務免除の場合には、県等が主催する厚生事業に参加した場合には、病気休職及び刑事休職の場合には「休職」、停職の場合には「停職」、欠勤の場合には「欠勤」との記載がそれぞれなされる(乙三号証、六号証の一ないし四)。

また、一人の職員が、一日のうちにたとえば半日休暇を取得し、半日出張した場合、当該日付の欄に休暇及び出張の複数の勤務状態に関する情報が併記されることになり、記載の仕方によっては各記載が重なり合うこともある(乙六号証の二ないし四)。

三  争点

1  本件出勤簿に記載されている情報は、本件条例一〇条二号本文に規定されている「個人に関する情報で特定の個人が識別され得るもの。」(以下「個人情報」という。)に該当するか。

(原告の主張)

個人情報とは、本件条例一〇条二号本文に「事業を営む個人の当該事業に関する情報を除く。」と規定されていることからも、公務員の身分・資格を離れた私人としての情報を意味し、公務員の身分・資格における当該公務員の情報は含まれず、しかも、個人に関する情報の全てではなく、個人のプライバシーに関する情報を指すものと解するべきである。

仮に、右のように解するのではなく、個人情報を、単に公務員個人に関する情報で当該公務員が識別され得るものと解すると、例えば、県知事が誰であるかは公知の事実であるから、県知事に関する情報の一切が個人情報であるとして開示されないことになるし、県職員録が公刊されていることから職名が明らかになれば県の主要なポストにいる職員は全て識別され得ることになり、このような職員に関する情報の一切が個人情報であるとして開示されないことになる。しかしながら、このような解釈は本件条例一条に規定されている「県民の県政に対する理解と信頼を深め、県民参加の開かれた県政を一層推進する」という目的に反し許されるものではない。

本件出勤簿には個人の私生活に関する事項である休暇の具体的な理由についての記載はないし、休暇自体は公務に関する事項であって私生活に関する事項ではないから、休暇の取得時期、日数も個人に関する情報ではない。また、本件出勤簿は、単に職員の氏名の記載と、出勤した場合には当該日付の欄に職員の捺印があり、出張した場合や欠勤した場合にはその旨の記載があるだけの帳簿と考えられるから、本件出勤簿を開示しても職員個人のプライバシーを不当に侵害することにはならない。

さらに、仮に本件出勤簿の全面開示が職員個人のプライバシーを侵害する面があるとしても、本件の場合、空出張の具体的状況が県民に明らかになるという公益性が認められるから個人のプライバシーの保護は右公益性の限度で制約を受けるべきである。

(被告の主張)

本件条例一〇条二号本文において「事業を営む個人の当該事業に関する情報を除く。」と規定されているのは、本件条例においては、事業を営む個人の当該事業に関する情報については同条三号において別個に判断するためであること、事業を営む個人とは地方税法七二条五項から七項までに掲げられている事業を営む個人のほか、農業、林業等を営む個人をいうことからすると、公務員を除外する趣旨ではないものと解するべきである。

また、本件出勤簿には職員の職、氏名や、職員の出張や出勤などの公務に関する情報だけではなく、年次休暇や病気休暇などの職員個人に関する情報が記載されている。したがって、これらの休暇に関する情報を開示すると休暇の事由や取得時期が明らかにされてしまう。これらの休暇に関する情報は公務に関する情報とは異なり職員個人の私生活に関する情報であり、個人情報と認められるから、出勤簿は条例一〇条二号本文に規定されている個人情報が記載されている場合に該当する。

2  本件出勤簿は本件条例一〇条二号ただし書ウに該当するか。

(原告の主張)

仮に、本件出勤簿に記載されている情報が本件条例一〇条二号本文に規定されている個人情報に該当するとしても、本件出勤簿は同号ただし書ウに該当する。

すなわち、本件出勤簿は富山県本庁就業規則に基づいて作成されたものであるところ、右就業規則は地方公務員法二四条により条例で定めなければならない勤務条件を定めるものであり、また、庁達であって法令等に含まれ、さらに、地方公共団体の長が制定する地方公共団体の内部的な組織や運営に関わる規則であって、判例によって地方自治法の法的規範として公法上の効力を認められているものである。

さらに、富山県において空出張は長年の公然の秘密であると伝えられており、平成九年二月には県当局が県議会において空出張があったことを明らかにしているところ、本件出勤簿の開示は空出張の存否及びその状況を把握するために必要不可欠であり公益性が認められる。ちなみに、被告は富山県監査委員事務局の旅行命令簿等を開示したが、多数の虚偽の記載が含まれている可能性があり、復命書は出張のうちのごく一部についてしか作成されておらず、だれが、いつ、どこへ出張したかはいまだ明らかになっていない。

(被告の出張)

本件出勤簿は同号ただし書ウには該当しない。

すなわち、本件出勤簿は、条例の委任を受けていない富山県本庁就業規則(昭和二四年八月二五日富山県庁達第六一号)に基づいて作成されたものであって、法令又は条例の規定に基づいて作成されたものではない。

また、職員の出勤、休暇等の状況を開示することが人の生命、身体、健康その他の公益上必要であるとも認められない。

さらに、被告は既に旅行命令簿や復命書等を開示しており、だれが、いつ、どこへ出張したかという職員の出張に関する事項についてはこれらの公文書により確認することができる。

3  本件条例一一条に基づく部分開示は可能か。

(原告の主張)

仮に、本件出勤簿の全面開示が職員個人のプライバシーを侵害するとしても、職員個人のプライバシーを侵害しないよう、開示する部分を限定するなどの方法は可能であるから、全面非開示とした本件決定は本件条例一一条に違反する。

(被告の主張)

本件出勤簿に記載されている情報の大半は出勤及び出張という公務に関する情報であるから、このうち公務に関する情報が記載されている部分のみを開示するとすると、結果として休暇の取得時期、日数が明らかになってしまう。休暇の取得時期、日数自体は個人情報であるから、公務に関する情報が記載されている部分のみを開示することもできない。

第三  争点に対する判断

一  争点1(個人情報該当性)について

1(一)  本件条例がいう個人情報とは、個人に関する情報で、特定の個人が識別され得るものであり、「個人に関する情報」とは、思想、信条、心身の状況、病歴、学歴、職歴、成績、親族関係、所得、財産の状況その他一切の個人に関する情報をいい、「特定の個人が識別され得る」とは、特定の個人が明らかに識別され又は識別され得る可能性のあることをいうと解される。

(二)  ところで、本件出勤簿には富山県監査委員事務局職員の出勤状況等が記載されていることから、本件では、公務員たる右職員に関する情報が個人情報に該当するかが問題となる。

公務員に関する情報には、公務に関する情報(公務遂行に関する情報、公務員の地位・資格に関する情報)と当該公務員の私生活に関する情報とがあるものと考えられる。そして、このうち前者については、公務員の社会的地位からして県民らによる批判対象となるべき事柄と解される。したがって、本件でいう個人情報にはあたらない。これに対して、後者は、公務員個人が有するプライバシーに関する情報である。本件条例が、一方で県民の公文書開示請求権の存在を認めつつ、他方で個人のプライバシーを保護しようとしており、公務員に関して特別な扱いをしていないことからすれば、公務員のプライバシーもまた十分尊重されなければならない。したがって、後者は、「個人に関する情報」に該当すると解される。そうすると、公務員に関する情報のうち、どこまでが公務員の私生活に関する情報なのか、どこまでがそれ以外の情報なのかが検討されなければならない。

2  そこで以下、本件出勤簿に記載されている個々の情報が個人情報に該当するかについて検討する。

(一) 「職」、「氏名」、「採用年月日」及び「退職年月日」各欄の記載について

これらの情報は、当該職員の公務員たる地位に関する情報であって、公務員に関する情報であると解される。したがって、これらの情報は、「個人に関する情報」には該当せず、本来開示しなければならない情報である。

(二) 出勤及び出張に関する記載について

これらの情報は、当該職員が当該日時において職員として現実に当該職務に従事していたことを示すものであるから、公務遂行に関する情報であると解される。したがって、これらの情報は、「個人に関する情報」には該当せず、本来開示しなければならない情報である。

(三)  及びの記載について

これらの情報は、当該職員が当該日時において職務専念義務を免除されていたこと、あるいは県等が主催する厚生事業に参加していたことを示すものである。そして、職務専念義務免除については、公務員の地位・資格に関する情報であり、厚生事業への参加については、いわば公務に準ずる任務を行っていたことを示す情報と解される。したがって、これらの情報は、「個人に関する情報」には該当せず、本来開示しなければならない情報であるものということができる。

(四) 休暇に関する記載及び「育児休業」、「休職」、「停職」及び「欠勤」の記載(以下「休暇等に関する情報」という。)について

本件出勤簿の上部欄には、採用年月日欄の下に「前年からの繰越日数」欄が、退職年月日欄の下に「翌年への繰越日数」欄がある。これらの欄は、年次休暇の取得状況に関するものと推認されることから、休暇等に関する情報に含まれるものとしてここで検討する。

そして、休暇等に関する情報は、当該職員が当該日時においては職員として当該職務に従事していないことを示すにすぎないものであると一応はいうことができる。しかしながら、病気休暇が当該職員の私生活に関する情報であることは明らかであり、その他の休暇等であっても、その取得等の理由、時期、期間は当該職員の私生活に密接に関わる情報であるといわざるを得ない。したがって、休暇等に関する情報は、「個人に関する情報」に該当する。そして本件出勤簿には「職」、「氏名」の情報が記載されており、既に述べたようにこれらの情報は開示すべき情報であるから、これらの情報とを併せ判断すれば、休暇等に関する情報は、「特定の個人が識別され得る」情報と認められる。よって、休暇等に関する情報は個人情報に該当し、非開示とすべき情報である。

(五) なお、原告は、本件条例でいう個人情報とは公務員ではない個人の情報を想定しており、公務員の情報は除外されていること、本件条例の運用において個人のプライバシーの保護も情報公開の公益性の観点からその限りで制限されるべきであること等の主張をするが、右はいずれも原告独自の見解であり到底採用できない。

3 以上からすると、本件出勤簿に記載されている情報のうち、「職」、「氏名」、「採用年月日」、「退職年月日」各欄に記載の情報、出勤及び出張に関する情報並びに、の情報は個人情報には該当せず、本来開示しなければならない情報であるが、休暇等に関する情報は個人情報に該当し、開示しないことができる。

二  争点2(本件条例一〇条二号ただし書ウの該当性)について

本件条例一〇条二号本文は、公文書の原則開示の例外の一つとして個人情報が記載されている公文書は開示しないことができるものと規定しているが、更にその例外の一つとして同号ただし書ウは、個人情報が記載されている公文書から「法令等の規定に基づく許可、認可、免許、届出等に際して実施機関が作成し、又は取得した情報であって、開示することが公益上必要であると認められる」情報を除くと規定している。したがって、当該情報が、個人情報に該当する場合であっても、「法令等の規定に基づく許可、認可、免許、届出等に際して実施機関が作成」等した情報であること、「開示をすることが公益上必要であると認められる」情報であることの二つの要件を満たした場合には、当該情報が記載されている公文書は開示しなければならない。

しかしながら、本件出勤簿に記載されている情報のうち個人情報に該当すると認められる休暇等に関する情報が「許可、認可、免許、届出等に際して実施機関が作成」した情報に該当しないことは明らかである。

したがって、休暇等に関する情報は、本件条例一〇条二号ただし書ウには該当しない。

三  争点3(部分開示の可否)について

1 本件条例一一条は、「実施機関は、公文書の開示の請求に係る公文書に前条各号のいずれかに該当する情報が記載されている部分がある場合において、その部分を容易に、かつ、公文書の開示の請求の趣旨を損なわない程度に分離することができるときは、その部分を除いて、公文書の開示をしなければならない。」と規定している。

したがって、開示しないことのできる情報が記載されている部分(以下「非開示部分」という。)と開示しなければならない情報が記載されている部分(以下「開示部分」という。)とが、容易に分離できること及び開示の趣旨を損なわない程度に分離できることの二つの要件を満たす場合には、開示部分については開示しなければならない。

本件では、前記のとおり、本件出勤簿に記載されている情報のうち、休暇等に関する情報は開示しないことのできる情報であるが、その他の情報は開示しなければならない情報であるところから、両者の各記載が右の二つの要件を満たすか否かが問題となる。

2 まず本件出勤簿においては、一日の欄に複数の記載が重なり合っている場合がある。たとえば、乙六の三の記載例(一〇月三日あるいは同月九日の例)によれば、「介護休暇一時間」という記載の上に「出張」のゴム印が押されている。このうち、「介護休暇一時間」の部分は非開示部分に該当し、「出張」の部分は開示部分に該当する。ところが、開示部分に該当する「出張」部分を開示すると、その背景に記載されている「介護休暇一時間」の部分も開示されてしまうことになる。したがって、この場合は、開示部分と非開示部分とを容易に分離できる場合とは認められない。

3 しかしながら、右2のような場合以外については、休暇等に関する情報が記載されている部分とそれ以外の情報が記載されている部分とは容易に分離することができるものと認められる。

この点について、被告は、休暇等に関する情報が記載されている部分以外の部分を開示すると、開示されない部分のほとんどが休暇等に関する情報ということになり、その結果として休暇の取得の日数、時期が明らかになって個人情報を開示する結果となることから、非開示部分と開示部分とが容易に分離できることにはならない旨主張する。

しかしながら、非開示とすべき休暇等に関する情報には、年次休暇、病気休暇、特別休暇、介護休暇、育児休業、休職、停職及び欠勤が含まれること、また、既に示したように、開示部分であっても、休暇等に関する情報と重なり合っている部分は結果として非開示扱いとなることからすると、開示されない部分には休暇以外の情報も含まれる可能性がある。したがって、休暇等に関する情報が記載されている部分以外の部分を開示したからといって、休暇の取得の日数、時期が直ちに明らかになるとはいえず、休暇の取得の日数、時期という個人情報を開示する結果にはならない。よって、被告の主張は採用できない。

4 そして、本件出勤簿に記載されている情報のうち、休暇等に関する情報が記載されている部分並びに当該日付の欄に休暇、育児休業、休職、停職及び欠勤のいずれかとそれら以外の場合の勤務状態に関する記載が重なり合っている部分とそれ以外の部分とは、開示の趣旨を損なわない程度に分離できることという要件をも満たす。

第四  結論

以上によれば、被告は、本件条例一一条に基づいて、本件出勤簿に記載されている情報のうち、休暇等に関する情報が記載されている部分並びに当該日付の欄に休暇、育児休業、休職、停職及び欠勤のいずれかとそれら以外の場合の勤務状態に関する記載が重なり合っている部分は開示しないことができたが、それ以外の部分は開示すべきであった。したがって、本件出勤簿の全部について開示しないこととした本件決定は、休暇等に関する情報が記載されている部分並びに当該日付の欄に休暇、育児休業、休職、停職及び欠勤のいずれかとそれら以外の場合の勤務状態に関する記載が重なり合っている部分を除いた部分を開示しなかった限度で違法であるというべきである。

よって、原告の請求は、右の限度で理由があり、その余については理由がない。

(裁判官堀内満 裁判官村上泰彦 裁判長裁判官大濵恵弘は差し支えのため署名捺印することができない。裁判官堀内満)

別紙

一 年次休暇、病気休暇、特別休暇、介護休暇、育児休業、休職、停職及び欠勤の情報が記載されている部分並びに「前年からの繰越日数」欄及び「翌年への繰越日数」欄

二 出勤、出張(県外出張、県内出張)、及びの記載部分であっても右一の記載と重なり合う部分

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